靴底の中央に接着された1本のソールが特徴的な『Zサン(ゼッサン)』。
履いているだけで、土踏まずを心地よくマッサージしてくれます。

前回の商品レビューを経て、“『Zサン』の特徴的なフォルムがどのようにして誕生したの
か“を、開発者の廣田 裕宣さんにインタビューしました。
(聞き手 古田大雅)


靴底がしなると足の裏が痛くて気持ちいい

Zサン/プロトタイプ

ーー初めて履いた時に驚きました。あの履き心地は計算されて作ったのでしょうか?

廣田 そんなことないですよ(笑)。僕自身も初めて履いた時は「なんだこの履物は⁈」と衝撃を受けましたね。”靴底がしなると足の裏が痛くて気持ちいい”なんて思ってもみなかった。「こんな形にしてみたらどうなるだろう?」と実験のつもりで靴底の中央にソールを接着したんです。

ーーそのアイデアの出発点はどこなんですか?

廣田 Zサン開発のきっかけは、2017年にTokyo Midtown Awardを受賞した「ゲタサンダル」を商品化した時になりますね。
今から思えば。ただその当時こんな商品ができるとは思ってなかったですけど。ゲタサンダルのフォルムは下駄そのものですが、ヴィヴィッドなカラーが現代風で、草履屋として見過ごせないというか、これは商品化しなくてはいけないと使命感がわきました

Tokyo Midtown Award受賞「ゲタサンダル」

ーー下駄を現代に調和させるって面白いコンセプトですね!

廣田 そこがゲタサンダルの魅力だと思っています。しかし、受賞作はモック版で実用性がありませんでした。そこで、スニーカーなどに用いられるEVAという素材で形にできないかと試行錯誤しました。サンプルをいくつか作ってなんとか実用化につなげて去年発売しました。

ーーそれからどういう経緯で『Zサン』の形に行き着いたんですか?

廣田 実は僕たち草履屋と下駄屋さんは少し違う職種なんですよね。同じ鼻緒式ですけど草履屋は素材として桐や杉の木を使うことはありません。あらためてゲタサンダルの商品化をする過程で下駄の研究をしました。下駄サンダルは二本歯でしたが、舟形や右近、千両下駄といった種類もあって草履屋としては新鮮でしたね。その時、一本下駄に興味が湧いて一本下駄と同じ形状のゲタサンダルをEVA素材で作ってみたんです。

Zサン/プロトタイプ ためし履き

ーーまさか『Zサン』の形状が好奇心から生まれたとは思いませんでした!

廣田 大阪人特有の”やってみなはれ精神”ですね(笑)。
今までの物作りも、まず作ってみる。それから問題点を修正していくようにやってきました。

ーーそれで廣田さんも「なんだこの履き心地は⁈」と思ったんですね。

廣田 はい(笑)。最初は「履けるかな」ですよ。1本歯でグラグラするし安定しないし・・・。しかも1本歯の部分をテコにたわんでしまう・・・。でも、それが徐々に気持ちいい感覚になってきたんですよね。痛気持ちい。そう、マッサージされてるような。おおこれは青竹ふみと同じだなと思いました。土踏まずが刺激される。

アーチ構造で足裏の温度が2℃~3℃上昇

ーー足裏の温度が上がったとお聞きしました。

廣田 そうなんですよ。冬場に履いてたんですけど裸足になって5分10分履いた後になんだか足裏がほんのり熱くなってきたかもと感じたんです。2~3か月後に大学の先生の実験で足裏の温度が2℃~3℃上昇するとエビデンスが出た時はビックリしました。足裏のアーチ構造を構成しようとするみたいなんです。

(大阪工業大学西脇准教授調べ)

ーーやっぱり足の裏の温度が実際に上がっていたんですね!何か他にも変化があったりするんですか?

廣田 足趾グリップ力が25%上がったというエビデンスもあります。足指で地面をつかもうとする動きらしいのです。他にも冷え性の改善や転倒防止、認知症を予防する効果を検証しているところです。私自身、趣味でマラソンをやっているのですが、10㎞20㎞走った後Zサンを履くと疲れがほぐれるような気がします。

(20代、55〜77kgの方9名で計測)※下駄サンダル=Zサン

ーーその一本下駄仕様のサンプルから『Zサン』が完成するまではスムーズに進みましたか?

廣田 しなるという課題はその弱みを強みに変えることで解決できましたが、最終製品を作るまでは歯の位置や高さや堅さを変えつついっぱいサンプル作りましたね

ーーすごく徹底された物作り精神ですね…!

廣田 せっかく斜め上の解決策を出せたのでこだわりが止まらなくなってしまったんですよね(笑)。

ーー他にもこだわりがあれば教えてください!

廣田 サンプルを作った段階では黒一色だったのですが。ゲタサンダルと同じようにポップなデザインにしたいなと考えました。
そこで本当にタイミングよくビーチサンダル専門店の九十九さんとの出会いがありましてカラフルなビーチサンダル台が手に入るようになって、9色展開の『Zサン2021』が完成しました。

カラーバリエーション

ーー今後は『Zサン』をどのように展開していきたいですか?

廣田 将来的には運動後のリカバリーシューズとしても『Zサン』が活躍したらいいなと思ってます。おうち時間が長くなっているので、まずは家事や仕事をしながら使ってもらえたら嬉しいですね。1本歯の意匠権としなる履物としての特許も申請しましたのでルームシューズ屋さんやサンダルメーカーさんとコラボレーションしたいです。


<インタビューを終えて>
『Zサン』が完成するまでには面白い裏話がありましたね!
実際に足の裏の温度や地面を蹴る力が上がっている点もすごい製品だと思います。
スポーツをする方やマッサージが好きな方は一度履いてみてはいかがでしょうか?

(取材・執筆 古田大雅)

公式オンラインストア Zサン(ゼッサン)
https://www.calenblosso.com/view/category/zessan

makuake プロジェクト(2021/7/23終了)
https://www.makuake.com/project/zessan